2010-03-01から1ヶ月間の記事一覧
表題は『ジェルミニィ・ラセルトゥウ』だが、本の中では「ヂェルミニィ」となっている。この表記の仕方に時代を感じる。岩波文庫版は昭和25年の刊行。今は『ジェルミニー・ラセルトゥ』の表記が一般的だ。「ゴンクウル兄弟」も、今は「ゴンクール兄弟」と書…
パク・チャヌク『渇き』の下敷きとなったゾラの『テレーズ・ラカン』を読み直した。 アルジェリアで、フランス人の軍人と現地の女との間に生まれたテレーズは、幼くして叔母のラカン夫人に引き取られ、夫人のひとり息子で病弱なカミーユと一緒に育てられる。…
今春の岩波文庫リクエスト復刊で、一番楽しみにしていた『阿呆物語』を読了。全六巻で構成されており、岩波文庫版で上中下三巻にわたる長編だが、最後まで飽きることなく読めた。 三十年戦争(1618〜1648)の真っ只中のドイツを舞台とした小説なので、兵士の…
この本の前半部分では、偽史に取り憑かれてしまった人たちのエピソードが紹介されているが、これが実に面白い。いくつか紹介してみる。 江戸初期、偽系図作りを商売としていた沢田源内。彼は架空の系図をでっち上げるだけでは飽き足らず、歴史にも手を出し、…
自由闊達に語り合えれば合えるほど、やはり音楽は楽しい。聴く喜びはかなりの程度で、語り合える喜びに比例する。音楽の楽しみは聴くことだけではない。「聴くこと」と「語り合うこと」とが一体になってこそ音楽の喜びは生まれるのだ。 われわれは、音楽は感…
川村湊の『日本の異端文学』(集英社新書)によれば、国枝史郎(1887〜1943)は、忘却と復活を繰り返してきた作家だという。国枝史郎は、1943年の死後、しばらくの間忘れられた存在になっていたが、1968年に桃源社から『神州纐纈城』が出版され、1976年には…
コンラッド(1857〜1924)の代表作のひとつで、1894年に起きたグリニッジ天文台爆破事件に着想を得た一種のテロ小説。しかし、『密偵』というタイトルから、スパイが縦横無尽に活躍する作品を期待すると裏切られる。副題に「ある単純な物語」とあるように、…
原題:Bak-Jwi 監督:パク・チャヌク 製作国:2009年韓国・アメリカ合作映画 キャスト:ソン・ガンホ(サンヒョン)、キム・オクビン(テジュ)、シン・ハギュン(ガンウ)、キム・ヘスク(ガンウの母) 痛い場面が苦手な私にとって、パク・チャヌク監督の『…
『おこりんぼ さびしんぼ』が面白かったので、山城新伍の本をもう一冊読んでみた。 在日コリアンの部落と被差別部落に囲まれた、京都西陣の小さな医院の息子として生まれた山城新伍は、子供の頃、差別的な言葉を使ったり、そのような態度をとるたびに、父親…
前のエントリーで触れた産經新聞の記事はあまりにひどい。少し長くなるが、全文引用してみる。 http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100304/trd1003040019000-n1.htm 「ローラ、もしもの時に男性に頼らなくても生きていけるように仕事を持っておきなさい」 …
(『講談社 世界文学全集24』所収) 1877年、ストリンドベリは、元ウランゲル男爵夫人であるシリ・フォン・エッセンと結婚する。一時は作家であることをほとんど断念していたストリンドベリであるが、この結婚によって生活も落ち着き、再び創作活動へと向か…
【あらすじ】 アンティノエの修道院長パフニュスは、放蕩生活を送っていた若い頃に心惹かれた舞姫タイスを改宗させようと、アレクサンドリアへと向かう。パフニュスは、タイスに存在によって多くの人が堕落させられていると考えたのだ。幼い頃、家にいた黒人…
『インビクタス』を観てアフリカの現在が気になり、この本を手に取ってみた。 私が子供の頃、テレビはアフリカの飢餓についてたびたび伝えていたように思う。栄養失調で腹部だけが飛び出た子供の映像はかなりショッキングだった。子供心にも、日本のような国…
英題:INVICTUS 製作年:2009年 製作国:アメリカ 日本公開:2010年2月5日 監督・製作:クリント・イーストウッド 原作:ジョン・カーリン キャスト: モーガン・フリーマン(ネルソン・マンデラ) マット・デイモン(フランソワ・ピナール) 公式サイトはこ…