2010-04-01から1ヶ月間の記事一覧

産經新聞の書評がひどい

4月25日の産經新聞に掲載された西尾幹二氏の書評があまりにひどい。河添恵子著『中国人の世界乗っ取り計画』(産經新聞出版)という本について書かれたものだが、書評の名を借りたヘイトスピーチに他ならない。以下、引用してみる。 ■狂躁ぶり描く驚嘆リポー…

モーリス・ルブラン『金三角』創元推理文庫

Maurice Leblanc, Le Triangle d'or (1917) 傷痍軍人のパトリス・ベルヴァル大尉は、何者かによって誘拐されそうになった看護婦のコラリーを救う。コラリーの夫はエサレス・ベイという名の実業家だったが、「金三角」というメモと紫水晶のメダルを持って、自…

アンリ=ジョルジュ・クルーゾー『密告』

原題:Le Corbeau 制作国:フランス 公開年:1943年 監督/脚本:アンリ=ジョルジュ・クルーゾー 撮影:ニコラ・エイエ キャスト:ピエール・フレネー(ジェルマン)、ピエール・ラルケ(ヴォルゼ)、ミシェリーヌ・フランセ(ローラ) 舞台はサン・ロバン…

モーリス・ルブラン『続813』新潮文庫

Maurice Leblanc, Les Trois Crimes d'Arsène Lupin (1910). 前編に続いて一気に読んでしまった。この作品には、読者を驚かせる仕掛けがこれでもかというばかりに詰まっている。とんでもない人物が刑務所のルパンを訪ねてくるところとか、殺人鬼L・Mの正体が…

モーリス・ルブラン『813』新潮文庫

Maurice Leblanc, La Double Vie d'Arsène Lupin (1910). ハヤカワ文庫の新訳版を読み出してからは、寝る前にルパンを読むのが習慣になっている。疲れていると本を読んでいても内容が頭に入ってこないときがあるが、ルパンのシリーズはとにかく先が気になる…

和田英次郎『怪盗ルパンの時代―ベル・エポックを謳歌した伊達男』早川書房

ルパンが活躍するのは19世紀末から20世紀初頭にかけてのベル・エポックと呼ばれる時代。パリが世界の文化的な中心地として飛躍的な発展を遂げた時代だ。ルパンは小説の中で、パリに生きる典型的な都会人として出てくる。ルパン・シリーズを読むことは、ベル…

モーリス・ルブラン『水晶の栓』ハヤカワ文庫

Maurice Leblanc, Le Bouchon de cristal (1912). 代議士ドーブレックの別荘へ侵入したルパン一味だったが、この盗みを計画した部下のジルベールとヴォシュレーが警察に捕まってしまう。ふたりの本当の狙いは、ドーブレックが持っている水晶の栓だった。逃走…

モーリス・ルブラン『奇岩城』ハヤカワ文庫

Maurice Leblanc, L'Aiguille creuse (1909). ルパン・シリーズ最初の長篇で、高校三年生のイジドール・ボートルレとアルセーヌ・ルパンの対決が語られる。ボートルレは、ジェーヴル伯爵の屋敷に盗賊団が侵入した事件をアルセーヌ・ルパンのしわざと見抜き、…

モーリス・ルブラン『カリオストロ伯爵夫人』ハヤカワ文庫

Maurice Leblanc, La Comtesse de Cagliostro (1924). アルセーヌ・ルパンが、ラウール・ダンドレジーと名乗っていた二十歳の頃の冒険譚。ルパン最初の冒険であり、怪盗紳士アルセーヌ・ルパンの誕生秘話でもある。この作品が書かれたのは1924年なので、ルパ…

モーリス・ルブラン『怪盗紳士ルパン』ハヤカワ文庫

Maurice Leblanc, Arsène Lupin Gentleman Cambrioleur (1907). ルパンというと、小学生の頃、ポプラ社から出ていた児童向けのシリーズを学校の図書館でよく読んでいた。ルパンのシリーズは、同じポプラ社の少年探偵団のシリーズとともに、私のお気に入りだ…

アナトール・フランス『神々は渇く』岩波文庫

Anatole France, Les Dieux ont soif (1912). フランス革命期の恐怖政治時代を舞台にした歴史小説。主人公のエヴァリスト・ガムランは美貌の若い画家で、年老いた母と一緒に暮らしている。熱烈な共和主義者で愛国者の彼は、ロシュモール夫人の運動によって革…

チェーホフ『かもめ』岩波文庫

ねえ、コースチャ、今では私、分かるの、理解できたの―舞台に立とうが物を書こうが同じこと、私たちの仕事で大事なのは、名声だとか栄光だとか、私が夢見ていたものではなく、耐えることができるかどうかなの。 今年のはじめに出た『かもめ』の新訳版を読ん…

プリーストリー『夜の来訪者』岩波文庫

John Boynston Priestley, An Inspector Calls (1945). とにかく、ぼくたちはまっとうな市民で、犯罪者じゃないんですからね。 岩波文庫版の解説によると、作者のジョン・ボイントン・プリーストリー(1894〜1984)は、イギリスのジャーナリスト・小説家・劇…

尾崎翠『第七官界彷徨』河出文庫

よほど遠い過去のこと、秋から冬にかけての短い期間を、私は、変な家庭の一員としてすごした。そしてそのあいだに私はひとつの恋をしたようである。 川村湊『日本の異端文学』でその名を初めて知って以来、尾崎翠はどことなく気になる作家だった。今回、河出…