2010-07-01から1ヶ月間の記事一覧

ロビン・マックネス『オラドゥール―大虐殺の謎』小学館文庫

1944年6月10日、フランス中南部の小さな村オラドゥールで、ナチス親衛隊(SS)による大規模な虐殺事件が起こった。村人642人が殺され、生き残ったのはわずか数人。男は納屋に、女子供は教会にそれぞれ押し込められ、機銃の一斉射撃を浴び、火を点けられ、手…

マルセル・パニョル『鉄仮面の秘密』評論社

ボアゴベ『鉄仮面』、久生十蘭『眞説・鐵仮面』を読んだら、史実としての鉄仮面はどうだったのかが気になり、本書を読んでみた。著者のマルセル・パニョル(1895〜1974)はフランスの小説家、劇作家、映画作家である。鉄仮面の謎に関しては、ハリー・トンプ…

三島由紀夫『わが友ヒットラー』

久しぶりの観劇。下北沢のザ・スズナリで、三島由紀夫の『わが友ヒットラー』を観る。演出は旧東独出身のペーター・ゲスナー。なかなか上演されない作品らしく、私も舞台で観るのは初めてだった。 作品そのものはずいぶん昔に読んだことがある。登場人物は男…

久生十蘭『久生十蘭ジュラネスク―珠玉傑作集』河出文庫

久生十蘭の再評価の気運が高まっているのだろうか。一昨年から国書刊行会の全集の刊行が始まっており、昨年には岩波文庫から短編集が出た。そして、今年は河出文庫にも短編集が入った。久生十蘭は、没後十年ほどたった1970年前後から最初の再評価が始まり、…

川北稔『砂糖の世界史』岩波ジュニア新書

著者はウォーラーステイン『近代世界システム』の訳者。本書も「世界システム論」的な歴史の見方がベースになっている。 本書によれば、砂糖がイギリスで大量に消費されるようになったのは、17世紀半ばのことだそうだ。その背景には、上流市民に独占されてい…

『百物語怪談会(文豪怪談傑作選・特別篇)』ちくま文庫

明治の文化人による怪談会の実録集。明治42年(1909年)に刊行された『怪談会』と、文芸誌「新小説」の明治44年(1911年)十二月号に掲載された特集企画「怪談百物語」を併せて収録している。裏表紙の内容紹介によれば、明治の末、「開化思想への反発と泰西…

久生十蘭『眞説・鐵仮面』桃源社

久生十蘭(1902〜57)も「鉄仮面」の話をもとにした小説を書いている。「オール読物」という雑誌の昭和29年1月号から10月号に連載された『眞説・鐵仮面』がそれで、昭和44年に単行本化された。 久生十蘭は、鉄仮面の正体について、ルイ14世の双子説にひとひ…

ボアゴベ『鉄仮面』講談社

Fortuné du Boisgobey, Les Deux Merles de Monsieur Saint-Mars (1878) ルイ14世治下のフランスに、鉄仮面をかぶせられた謎の囚人がいた。松村喜雄『怪盗対名探偵』によれば、この囚人は1669年、ピニョロル(現イタリア)の要塞に収容されたのち、各地の監…