『百物語怪談会(文豪怪談傑作選・特別篇)』ちくま文庫

 明治の文化人による怪談会の実録集。明治42年(1909年)に刊行された『怪談会』と、文芸誌「新小説」の明治44年(1911年)十二月号に掲載された特集企画「怪談百物語」を併せて収録している。裏表紙の内容紹介によれば、明治の末、「開化思想への反発と泰西心理学の影響下に高まりゆく「怪談復興」の大波は、文壇画壇へと波及し、名だたる文人墨客を集めた百物語怪談会が、幾度となく開催されていた」とのこと。
 数十の話が収められているが、一番多い話のパターンは、遠いところの親戚や知人がふと訪ねてきたので不思議に思っていたところ、あとで、その人物がちょうどその時刻に亡くなっていたことを知る、というもの。
 全体的に、背筋が凍るような恐ろしい話は少ないが、なかにはこんなものもある。ある武家の次男が嫁をもらったが、その嫁が病弱だったため、姑の強い望みで離縁し、実家に送り返した。その女はまもなく亡くなり、武家の次男は後妻をもらった。しかしその後妻も病気がちになる。市巫の言うには、先妻の祟りだという。やがて侍女に先妻の霊が乗り移り、「おすみ様[=後妻]をとり殺しておやんなさい」と狂ったように叫び出す。後妻も鼻からだらだらと血を流したり、皺だらけの老人のような赤ん坊を出産したりして、やがて亡くなってしまう。そして、姑も気が狂って死んでしまう(鰭崎英朋談「九畳敷」)。
 大抵の話が、4〜5ページくらいで終わるので、電車のなかで読むのに丁度いい。

百物語怪談会―文豪怪談傑作選・特別篇 (ちくま文庫)

百物語怪談会―文豪怪談傑作選・特別篇 (ちくま文庫)