ジョニー・トー『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』

原題：Vengeance／復仇
製作国：香港・フランス（2009年）
監督：ジョニー・トー
キャスト：ジョニー・アリディ（フランシス・コステロ）、アンソニー・ウォン（クワイ）、ラム・カートン（チュウ）、ラム・シュ（フェイロク）、サイモン・ヤム（ジョージ・ファン）、シルヴィー・テステュー（コステロ）

　パリでレストランを経営するコステロには、マカオに住む娘がいる。ある日、彼女の家族が何者かに襲撃される。夫とふたりの息子を殺され重傷を負った娘に、コステロは復讐を約束する。三人の殺し屋とともに、娘の仇を討とうとするコステロだが、かつて頭に銃弾を受けたときの後遺症で、記憶を失い始めていた…。
　期待していたジョニー・トーの新作。ジョニー・トーが監督のヤクザ映画で、アンソニー・ウォン、ラム・シュ、サイモン・ヤムあたりが出てくるなら、これはもう鉄板でしょ、と思っていた。しかし主人公を演じるのは、何とジョニー・アリディ。フランス人なら誰もが知っているロック歌手で、日本だったら矢沢永吉のようなポジションにある人物と言えば良いだろうか。ジョニー・アリディとジョニー・トー。ふたりのジョニーがどんな映画を作るのか、公開前から興味津々だった。
　作品としては前々作『エグザイル／絆』の焼き直しのような感じ。ジョニー・アリディを除けば、役者陣もかぶっているし、ストーリーも似通っている。そして、ケレン味たっぷりの演出も相変わらずで、特に、映画の序盤、コステロと三人の殺し屋が拳銃の試し撃ちをする場面は最高だ。あと、お馴染みの料理の場面で、ジョニー・アリディがパスタを作るのだが、何となくアンソニー・ウォンが食べにくそうにしていたのには笑ってしまった。やっぱり中華料理の方が合うのだろうか。それにしても、中国人ほど美味そうに食事をする国民はいない。ジョニー・トーやウォン・カーウァイの映画を見ると、いつもそう思う。
　中盤以降は、しりすぼみになっていく。別に悪くはないのだが、どこか物足りない。ジョニー・トーの映画が好きな人はそれなりに楽しめると思うが、これが初めてという人にはつらいかもしれない。一見さんお断りの作品という感じだ。