門谷建蔵『岩波文庫の赤帯を読む』

 岩波文庫赤帯(外国文学)ばかり900作品を読んだ著者の読書記録。読書開始は1996年1月で完了は1997年4月とあるから、1ヶ月あたりおよそ56作品をこなしていることになる。ただし、著者は全ての作品を隅から隅まで読んでいるわけではなく、途中で投げ出したものもある。それにしてもよくこの期間でこれだけの本を集めて読んだものだ。
 著者はプロの書評家ではなく普通の勤め人だった人で、執筆当時(1997年出版)60歳近くだったと書いてある。今頃は引退されて、悠々自適の読書生活を過ごされているのだろうか。
 各作品には梗概や感想の他、購入した書店や価格の記録もついている。著者は16ヶ月の間におよそ1100冊の赤帯を買い約40万円を使ったそうだ。趣味としてはコストパフォーマンスが非常に高いと言えそうだ。ただし、本を収納しておくためのスペースを確保するのが大変そうだが(わが家も本の収納場所が目下大問題となっている)。著者は文学研究の専門家ではないので、作品につけるコメントはかなり自由奔放だが、それがかえって面白い。また、話の途中でところどころ脱線するのだが、仲間内でする麻雀のレートまで詳しく書いてあるのには笑ってしまった。
 ちなみに著者の次の言葉は、まさにその通りと思った。

本は、買う、読む、書く、の順に楽しい。買うには先立つものが必要だが、探すと集めるの楽しみもついてくる。

 わが家の財務大臣検事総長には、必要な本だけを手元に置いといて、あとは売りなさいとよく言われるのだが、本には収集する楽しみもあるのである。
 この本はブックガイドとしても大いに役立つので、外国文学好きの人は手元に一冊置いておきたい。

岩波文庫の赤帯を読む

岩波文庫の赤帯を読む